【開発の経緯】
ML−2C開発の源流はML−1にあります。
このML−1(当時は“Moonlight”とだけ呼ばれていましたが)の原型機は、船旅が大好きな方のためにつくられました。
日中、ひとしきり楽しんで疲れた身体を、音楽に浸りながらゆっくりと休めたい、ということでしたので、
開発中の試聴試験は主に夜にやった覚えがあります。
このときから、夜に一人愉しむ、ということでMoonlightと呼ばれるようになりました。
(ベートーベンの“月光”をよく聴いていた、ということもありますが)
オーナーとなる方は音楽にも料理にも感性の鋭い方でしたから、基本性能も高水準のクオリティーを満足しなければなりません。
人生を楽しむ方の身の回りのものとして、相棒となりうるべきデザインも重要な要素です。
紆余曲折がありながらも、原型機は完成し嫁入りすることができました。
ところで、その出来がかなり良かったので、当製作所としては初めてのことではありましたが量産をしてみよう、という意見が出ました。
原型機に改良を加え、量産のための部品を調達しML−1が作られました。
ML−1は所内でも評価が高く、その音質はコストを度外視して作られた原型機と比べてもまったく遜色の無いものでした。
しかしながら、量産に不慣れなため、大きな弱点もありました。
製作にあたっての工程数が多すぎるのです。製造中止が間近の部品が使用されていることも問題でした。
程なくして、さらに生産効率を上げるための設計変更をしようということに、当然なりまして、
それならば、さらによいものを目指して開発もやってしまおう、となりました。
このときには、一応、改良点のアイディアなどは頭の中にはあったのです。だから、簡単なことだろう、と。
ところが、なかなか思ったような成果が出ず、結局、17機もの試作を繰り返すことになってしまいました。
かなりの種類の回路方式を試したと思います。それぞれが面白いものでしたが、何かが違うのです。
17機目にしてその手がかりをつかめたので、それを基にしてML-2Cがつくられました。
開発中に一貫して想い続けたことは、音楽の感動をより深く味わいたい、ということでした。
悲しい曲では悲しみを感じたい、うれしい曲では喜びを感じたい。それはもう、思う存分に。
ML−2Cはその目的を達成できたと思います。
【手前味噌レビュー】
評価は人様が下すものである、と考えていますので、自己評価を公にすることはいささかはばかられますが、
まあ、話半分に読んでください。
ML−2Cの音は太いです。
繊細な音を目指していたのに太いとはどういうことか、といわれてしまいますが、
完成品をつくるうえで、電流の瞬間的な供給能力を大幅に増強した結果、このようになりました。
開発者としてはML−2Cの持ち味は第一に繊細であることにあると思っていますが、
人によっては、とても太い音だという第一印象を持つかもしれません。
試作機と比べて低音も良く出るようになりました。音程感や存在感のある良質で豊かな低音です。ボンボン・ボワボワはしません。
中域のクオリティーには最も気を使っています。繊細でしなやかなML−2Cの本領が存分に発揮されるでしょう。
分解能が高いのでオーケストラの中にもソロが埋まってしまうことがありません。
良いヴォーカリストがどれほど歌声に気を使っているのか、とてもよくわかります。
高域の耳障りさもありません。鼓膜を締め上げられるような圧迫感がなく実に開放的な鳴り味です。
ギターやピアノ、パーカッションの立ち上がりがとても美しい。
空間表現・空間分解能は得意分野でしょう。遠くまで見通したくなるようなそんな音場を持ちます。
ML−2C、いいアンプになりましたね。
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