Moonlight Sonorous(ムーンライト ソノラス) 形式:ML−4S

ヘッドホンアンプ


【解説】

ML−4Sの先代となるMoonlight Classic(ムーンライト クラシック):ML−2C初期型の完成からおよそ2年半、
更なる探求を通じて新たな技術の蓄積を続けてきました。
多くのオーナー様からのご意見やご要望も新たな知見をもたらす大変重要なものでした。
それらを活かすことで生まれたのがML−2C強化型です。
ML−2Cは可搬のサイズと重さでありながらも据え置き型のヘッドホンアンプを凌駕する能力を実現した意欲作です。
しかしながら、やはりボディーサイズの制限による限界がありました。
効果的であることがわかっていながらも、どうしても内部に収められずに採用できなかった技術手法が多く残りました。
そういったこともあり、ボディーサイズの制限を緩和し、より大型のアンプを開発する企画が立ち上がりました。
Jupiterには興味はあるが予算的に難しいとの声も多数寄せられていましたので、
部分的には初代Jupiterの守備範囲をカバーできるようにすることも実現したいことでした。
皆やりたいことは既にわかっています。フラストレーションがたまっていたこともあり企画開発は驚くほどの勢いで進みました。
あれは実にエキサイティングな体験でした。
なにしろ重要なことがあっという間に決まってゆきます。
●これまでに蓄積した音に関する技術は基本的に全て投入し、その上でできるだけコンパクトにつくる。
●ML−2Cではコスト的に採用が難しかったJupiterグレードの高品質パーツを採用する。
●ML−2Cよりもゆとりのある設計とし、貴重なパーツの負担を軽減させ更なる長寿命化を行なう。
●これまでに無かったほどの高品質な外装を実現する。
まさに、ML−4Sはこれまでの当製作所の蓄積を集大成した製品となりました。

Moonlight Sonorous(ムーンライト ソノラス):ML−4Sの存在意義はその音楽性豊かで緻密な描写力にあります。
音響機器として良好な電気的性能を持つことはもちろんですが、
それ以上に、いわば音楽の味わいに関わる部分を追求しています。
心地よく聴かせてくれる透明感、うるおいと色気のある音色、空気感やライブ感がありありと感じられる響き、
高い解像度と情報量がありながらも聴き疲れの無いしなやかな音調、
聴き応えのある中域の厚み、伸びやかに艶やかに磨かれた高域、パワフルで芯のある低域。
音楽性の高次元での両立を果たすべく全てを磨き上げ、それらを得ています。
併せてML−4Sの特徴として最も印象的なのはその音場です。
力強くも小気味良い音の立ち上がりから、その音の背景にパノラマを感じさせるように広がりゆく豊かな音場をもちます。
音源との距離感がつかみやすく、また音が遠くなるわけでも薄くなるわけでもなく、
それでいて広々とした背景を遠くまで感じさせる能力を持っています。
ひとつひとつの音が響きあい重なりあうことで描き出されるその景色が脳裏や胸中に浮かんでくるような、
そういったイマジネーションを聴き手にもたらしてくれる高い音楽性を備えています。
繊細で丁寧な描写力は、きっといつも聴いていた音の背景に、ふっと、こんな音もあったのかと感じさせてくれることでしょう。

これらの高い音楽性を実現する為には回路と搭載パーツの両面からのアプローチが不可欠です。
アナログ機器特有の利点を活かしきることで高い音楽性を実現する、と言うこともできます。
アナログ機器はその作動が連続的かつダイレクトで、しかも多くの要素が有機的に影響し合います。
設計が未熟だとノイズや不安定動作に悩まされます。
予想外の現象が起こることも多く、なかなか思い通りに行かないこともあります。
教科書に載っていないような現場ノウハウがモノを言う側面もあり、職人的で完成にも時間がかかります。
しかし、チューニングが高次元に決まったときには味わい深い最高に素晴らしいものになります。
ML−4Sはフルディスクリート・アナログA級ドライブアンプです。
アナログアンプとして最高の構成を満たすもののひとつです。
ディスクリートと言うのは単機能の個別素子のことでトランジスターなどのパーツのことを指します。
ML−4Sは電源回路から音響回路まで、IC等の集積素子を使わずに、
その搭載回路の全てにディスクリート素子を使用しています。
ディスクリートパーツはその個々の性能・品質が高いということも利点ですが、
用途に応じて全くのゼロから回路を組めると言うこともアナログ機器特有の利点を活かしきる上で大きな強みとなります。
それを最大限に活かすことで結果的にML−4Sは電源回路、音響回路ともに極めて独自性の高い回路となっています。
そして、その回路構成の持ち味を引き出すのはアナログ的に優れた高品質パーツ群です。
回路構成とそれを活かす高品質なパーツとの相乗効果によって初めてアナログ機器は完成します。
余談になりますが、どのような回路、どのようなパーツにも必ず固有の音色があります。
程度の違いはあっても何の影響作用も持たない無色透明といえるものは存在しません。
そして、それらの組み合わせによって、ある印象を聴き手に与えるものとなります。
相乗的に重ねあわせて物凄く特徴的にもできますし、相補的に両立を目指すこともできますし、
相殺的に特徴を感じさせないようにすることもできます。
こういったことを駆使して高い音楽性の実現を探求するわけです。
そして、美しく際立った特徴を備えつつも、最終的には全体としての調和がとれていることが重要です。
不調和は必ず人に違和感を感じさせます。
違和感があるようではリラックスして楽しむことができませんから、不調和が感じられるようではダメなのです。
そのため、長所・特徴を心地よく楽しめるようである為にも、最終的に調和・バランスがとれていることがとても重要なのです。
リラックスしてひたすら音楽を楽しみ、そして聴き手が癒し満たされること。
それがわたしたちの求める至上のことです。

また、ML−4Sは各種ヘッドホンとの相性も更に良好なものとすることができました。
ML−4Sは強力な電源回路に支えられて、これまで以上に各種ヘッドフォンへの良好な駆動力を発揮します。
ML−2Cと同様にHD650やK-701(K-702)との相性も変らず良好ですし、
HD800などヘッドフォンアンプの能力をより必要とするヘッドフォンも充分にその魅力を引き出すことができます。

ところで、近年アナログ的に高品質なパーツはその多くがコストの面から生産終了となり、どんどん姿を消しています。
なかでもオーディオ用途として良質なパーツは入手困難になっているものが多いです。
特にオーディオ用途として設計生産されていたローノイズトランジスターは絶望的な状況で、
ML−4Sに採用されている国産ローノイズトランジスターは既に全品種が生産終了となっています。
半導体以外のパーツもアナログ的に高品質なものは生産終了が相次いでおり、入手が極めて難しくなってきました。
もちろん新しいパーツの中にも良いものはあるでしょうし、旧いものであれば良いというわけではありませんが、
パーツメーカーがかつてほどにはアナログ品質にコストをかけられなくなってきているのは事実です。
そういった事情もあり、当製作所としては相当の投資を行いストックパーツの確保を行ないました。
そのため当面は現在の仕様を変更することなく製作を継続できる見込みです。
ML−4Sの現仕様では無誘導巻線抵抗(NS−2B)を10本、ほか製造終了の電力抵抗や薄膜抵抗、
ポリスチレンコンデンサー、ローノイズトランジスター等、音質的にもとても優秀なパーツを搭載しています。
こういった時代背景からも、良質なアナログパーツを使用したディスクリートアンプであるML−4Sは
近年貴重な存在意義のあるものと考え、製作・メンテナンスを今後ともできる限り継続させたいと思っています。

Moonlight Sonorous(ムーンライト ソノラス):ML−4Sは非常に格調高い音に仕上がりましたので、
それにふさわしい最高の装いを施しました。
フロントパネル、リアパネルは黒檀無垢材からの削り出しとしました。
黒檀は材によるバラつきが非常に大きい材で、材の選択と切り出し方を誤るとほぼ全てが使えなくなってしまうほどです。
そのため、手間はかかりますが流通現場に直接足を運び一つひとつ吟味して買い付けを行なっています。
切り出し方も一つひとつの表情と景色を考慮しながら丁寧に行ないます。
ボディーの天地を装う皮革には、特にプレミアムカラーモデルについては
ML−4Sの音のクオリティーを体現すべく、また日本的な美しさにもこだわるべく
希少性が高く高価な非常にクオリティーの高い特製のものを思い切って採用しました。

もちろん、内部回路も外装も全てを熟練の手作業によって仕上げています。

そういう工程を経て丁寧に仕上げられたアンプは堂々たる大変に風格を持つものとなります。
そうして初めて、ご縁の合ったオーナー様のもとへ完成した喜びとともにお届けできるものとなります。

 

<追記>
Sonorous(ML−4S)は、ベースとなったML−2Cと同様にK701(K702)やHD650との相性がとても良好ですが、
第二期型バージョンアップでの能力向上はHD800との適合性を大きく向上させる、図らずも、非常に有効なものでした。
もともと音場の広いヘッドフォンとはいえ、HD800では笑っちゃうくらいの臨場感が体験できます。
非常に高価なのでおいそれとは手が出ないヘッドフォンですが、
是非一度Sonorous第二期型で聴いてみて欲しい音です。
HD800は大変高性能ではあるものの、アンプの回路設計によっては音が薄くなりやすく、
ややもすると「え?こんなもんなの?」と期待ハズレに思われやすいところがあります。
その魅力と能力を引き出してあげる為にはアンプ側で丁寧にエスコートする必要があるように感じます。
この音をお聴きになれば、HD800がそれ以前のものとは驚くほど次元の違うヘッドフォンであることが良くわかると思います。
音の厚み、解像度、臨場感が両立された素晴らしい音です。

 

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