Moonlight Sonorous(ムーンライト ソノラス) 形式:ML−4S

ヘッドホンアンプ


【クドい解説】

※以下は技術者の自己満足の文章です。
 特に必要な内容が書かれているわけではないので
 くどいなぁ、と感じたら「戻る」ボタンで解決です。


 
結論から言うと、アンプのチューニングにおいて重要なことは
システムの動特性に美しく高度な調和をもたらすことだと思います。

ヘッドフォンとアンプを一体のシステムとして考えた場合、
その諸特性は一定ではなく入力される信号に応じて大きく変化します。
これは“システムの動特性”とでもいえますが、これが一定不変のシステムはこの世に存在しません。
程度の差こそありますがどのようなシステムにも必ず存在します。

ところで、測定という行為は特定のパラメーターを固定し、事象の断面を静的に切り取るものなので
動特性の全体像を把握することは一般的に困難なことです。
(だからこそ、測定を行なう研究者やエンジニアには、
目的の為にどのような測定を行なうのか見極めるセンスが必要となります。)

アンプの特性においてよく知られているのは周波数特性や歪率特性です。
グラフを目にすることも多いと思います。
特性の測定自体は大変重要なものです。
特性に問題のある回路は素性が悪かったり、健全な動作をしていない可能性が高いからです。
素性の悪い回路をチューニングしても時間の無駄ですし、
回路動作の改善の為にも特性データは必要です。
特性が悪い回路に音の良いものがあったためしはありませんが、
特性がずば抜けて良い回路であっても音がイマイチなことがあります。
試作した者にとっては残念な結果ですが、
奏でる音楽の美しさや感動の度合いを直接測定する方法が無い為にこのようなことが起こります。

動特性のように多数の要素が複雑に相関しながら変化するさまは、
測定ではなかなか全体像を捉えられませんが、
人は言葉にならないような感覚でそれを鋭敏に捉えます。
アンプの音の美しさはその動的特性にあるのではないか。
横濱音羽製作所ではそのように考えています。

余談ですが、アンプのクオリティーにとっては回路構造の影響が最も大きいですが
部品による影響も無視できないほど大きいです。
部品による音の違いは数値化して議論することが難しい為、
気心知れたエンジニア同士でなければ話し合うことは敬遠されますが
(単純な優劣の話になり無意味な結果となることが多い)、
だからこそ多くの個人的経験がものをいいます。
こういう体験論的・経験論的な手法はオカルトと揶揄されます。
なぜなら、そういったノウハウは真偽の確かめようが無い為、情報の洗練が行なわれにくいからです。
実際、部品を交換して音の印象が大きく変わっても測定データにはほとんど違いが現れません。
(測定するたびにフラフラとする誤差の範囲内。つまり、有意な差は無いと判断する。)
そういったことがわかっているから、エンジニアは個人的経験に基づくオカルト・ノウハウついては
多くを語らず、いざというときの隠し玉に温存しておくのです。
もちろんクライアントにも種明かしはしません。
あ、話がずれてしまいました。
部品のことです。
ML−4Sには結構年季の入った部品も使われています。
回路との相性や使用部位など含め長年かけて発掘してきた部品達です。
旧い部品がいいというわけではありませんし、
新たな部品やその効果的な使い方を求めて研究は継続していますが、
いまだにそれ以上のものが見つけられていないということです。

ところで、高品質なものと言うのは必ず相反する複数の要素を高次元で両立させています。
軽くて頑丈で歩きやすい靴、ハイパワーで扱いやすくて燃費の良いエンジン、
切れ味が良くて刃こぼれしにくくて研ぎやすい刃物、高機能で扱いやすくて軽量で高性能なカメラ(重くていいカメラも多いですが)、
他にもいろいろありますね。
それらのものは高度な調和を保っていると言い換えることも出来ます。

私たちはMoonlight Sonorous(ML-4S)の音にも高度な調和を求めました。
上手く文章化できないので箇条書きにします。
(※一部に意味が不明確なものがあります)
 ・キレがあるのに、まろやか
 ・まろやかなのに、パンチがある
 ・パンチがあるのに、軽快
 ・軽快なのに、どっしりとしている
 ・厚みがあるのに、繊細
 ・音圧を感じつつ、ふわっとしたふくらみ
 ・音の立ち上がりのインパクトを重視しつつ、違和感・不快感がなく聴き疲れしない
 ・音の前後関係の解像度が高く、音が空間を奪い合うことがより少なくなっていることで
  空間の広がりを感じさせるのに、薄くならずに密度がある味わい豊かな音
 ・長年熟成されたシングルモルトのスコッチのようなオークエキスの芳香にもかかわらず、透き通るような純度・透明感

私たちつくり手は自らの美的感覚を満たす高度な調和をひたすらに求めています。
様々な手法、技術はそのために編み出されてきたとも言えます。
ロケットや飛行機、自動車などの高度な工業製品であっても、
それを生み出した人間が自ら美しいと感じないようなものは良いものにはなりません。
実際に技術レベルの高い凄腕のエンジニアは例外なく“美”を重視します。
形状が美しくなければならない、配線が美しくなければならない、配置・ジオメトリーが美しくなければならない…
油まみれになろうが埃まみれになろうが求めているのは優れていてかつ美しいものです。
同じ日本人だからかもしれませんが、彼らの熱弁には共感を覚えずにはいられません。

だんだん関係ない話になってきましたが、さらに続けます。
どんなものでも開発と言うのは未知の現象が起こり得ますから、
既存の測定方法によるデータやシミュレーターの結果だけでは重要な事実を見落としてしまう可能性が残ります。
だから、実機をつくって試験を行なうんです。
それによって未知の問題を洗い出し、それを解決する為に必要とされる新たな測定項目と測定方法を編み出すわけです。
致命的な問題が発覚して多くの人が右往左往する中、凄腕のエンジニアの目は不敵にぎらぎらと輝いています。
エンジニアという人種のセンス・オブ・ワンダーが全開になる瞬間です。
できることなら若い人は、その人間として最高にカッコイイ瞬間を目にしてください。人生観がかわりますよ。
ものが完成するということの裏にはそういう人たちの存在があります。

 

 

 

 

あれ?最後まで読んだんですか?

会議でボツになるような文章を最後まで読んで下さったあなたには、きっといいことがあるでしょう。

それでは、ごきげんよう。


いちつくり手、記す

 


ML−4Sのページへ

 

トップページへ